- 2026年2月20日
第3回 「検査で異常なし」と言われたときに、あなたが知っておいてほしいこと
- 「異常なし=問題なし」ではない理由
- 検査で異常なし。でもつらい。そのときどう考える?
■ 「検査の結果、どこも悪くありませんよ」
診察室でこの言葉を聞いて、ホッと胸をなでおろす方がいる一方で、こんな風に感じる方も少なくありません。
- 「じゃあ、この『つらさ』の正体は何なの?」
- 「気のせいだと言われたみたいで、悲しい……」
- 「原因がないなら、もう相談しちゃいけないのかな?」
町のお医者さんとして、私はこうした皆さんの声に日々接しています。
今日は、「異常なし」という結果をどう捉え、どう行動すればよいのか、
そのヒントをお話ししたいと思います。
■ 「検査の結果、どこも悪くありませんよ」
検査で異常が見つからなかったというのは、
医療従事者にとって非常に重要な確認作業が完了したことを意味します。
それは、「今、目の前で命に関わるような緊急事態ではない」という、安全確認が取れたということです。
これは紛れもなく喜ばしいニュースです。
しかし、決して「あなたの症状は存在しない」とか、
「気の持ちようだ」という意味ではありません。
まずは、この安全の確認ができたことを受け止めてください。
■ 現代医療の検査にも「得意・不得意」がある
私たちの使う医療機器は日々進化していますが、万能ではありません。
- 採血データには表れにくい「原因不明のだるさ」
- CTやMRI画像には映らない「慢性的な痛み」や「しびれ」
- 病気の初期段階で、まだ数値として現れていない「微細な変化」
これらは、どんなに精密な検査をしても「異常なし」という結果になることがしばしばあります。つまり、「検査結果」と「あなたが感じている不調」は、
必ずしも一致しない別々の情報として考えてよいのです。
■ 「現時点では原因不明」が正直な答え
医師が「はっきりした原因は分かりません」と言うとき、
それは決して患者さんを突き放しているわけではありません。
「今の医学の知識や検査方法の枠組みでは、まだ名前をつけられる病態ではない。
だから、もう少し様子を見守りましょう」
という、現時点での医療としての正直な判断なのです。
診断名がつかないからといって、あなたのつらさが軽んじられているわけではありません。
■ こんなときは、遠慮なくもう一度相談してください
「異常なし」と言われた後でも、心配な症状があれば遠慮なく再受診してほしいサインがあります。
- 症状が少しずつ、しかし確実に悪化している
- 不調のせいで、仕事や家事が手につかないなど、生活に支障が出ている
- 以前とは違う、新しい別の症状が出てきた
- どうしても拭いきれない不安が残る
「前と同じ検査結果になるだろうから」と諦める必要はありません。
時間が経つことで、ようやく新しい所見や原因が見つかることは本当によくあることです。
■ 町のお医者さんとして思うこと
私たち医師は、血液検査の数値やエックス線(レントゲン)写真だけで皆さんを診ているわけではありません。
あなたが「つらい」と感じている、その事実そのものが、私たちにとって最も価値のある「診療の情報」なのです。
結果に納得がいかないとき、不安が残るときは、
「どこも悪くないって言われたけど、やっぱり痛いんです」と、
どうぞそのままの気持ちを伝えてください。
一緒にそのつらさの理由を探っていきましょう。
参考・引用元(内容の考え方の参考として)
※以下は本文を作成する際の医学的考え方の参考資料であり、本文はこれらをそのまま引用したものではありません。
厚生労働省「上手な医療のかかり方」
日本医師会「健康の森 Q&A」
英国国民保健サービス (NHS) 公式サイトwww.nhs.uk
【重要】 医療上の責任について
本コラムは、医療に関する一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療方針を示すものではありません。症状や体調に不安がある場合は、自己判断せず、必ず医師または医療機関にご相談ください。
緊急性が高いと感じる場合は、迷わず救急車や、各自治体の救急電話相談(#7119(救急安心センター事業)など)を利用してください。「異常なし」と診断された後でも、症状が急変した場合や、耐えがたい痛み、意識の低下などがある場合は、速やかに医療機関に連絡するか、救急車(119番)を検討してください。
掲載内容は2026年1月現在の情報に基づいています。本記事の情報を利用した結果生じたいかなる損害についても、筆者および掲載媒体は一切の責任を負いかねます。
著者プロフィール
梶原 直央
当院管理医師 内科・外科医師
(元東京医科大学呼吸器外科教授)
日常診療では、病気そのものだけでなく、生活背景や不安も含めた相談を大切にしている。
本連載では、医療情報があふれる時代だからこそ、「何を基準に考えればいいのか」「どこまで心配しなくていいのか」を町のお医者さんの視点で伝えている。