• 2026年5月7日

第12回(最終回)  町のお医者さんが伝えたかったこと

~受診の迷いを「安心」に変えるために~

「こんな軽い症状で病院に行ってもいいのかな」
「先生に言われたあの言葉、どういう意味だったんだろう」

そんな診察室の行き帰りに生まれる小さな迷いや不安に寄り添いたい――。その想いでお届けしてきたこの連載も、いよいよ最終回を迎えました。

医学的な知識を詰め込むことよりも、「どうすればもっと楽な気持ちで医療と付き合えるか」というヒントを大切にお伝えしてきました。

最後は、全12回を通じて皆さんに一番知っておいてほしかった「自分を健やかに保つための心の持ち方」を、改めて整理してお届けします。

連載全体を通してお伝えしたかったのは、「受診を迷うことは、決して悪いことではない」ということです。

  • 病院へ行くべきか、もう少し家で休むべきか。
  • 検査で異常がなくても、もう一度相談していいのか。
  • 自分に合う病院を、探し直してもいいのか。

こうして立ち止まって考えるのは、あなたが自分の体や今の生活を、とても真剣に考えている証拠です。私たち町のお医者さんは、あなたが「迷った末に相談に来てくれた」その一歩こそが、健康への何より尊い第一歩だと感じています。

「しばらく様子を見ましょう」

「検査の結果は問題ありません」

「お年のせいですね」……。

診察室でかけられるこれらの言葉に、どこか突き放されたような寂しさを感じたことはありませんか?

しかし、これらは決して「何もしない」という投げ出しの言葉ではありません。

  • 「今は命に関わる急ぎの危険がない」という太鼓判
  • 不要な薬による副作用から、あなたの体を守るための「積極的な選択」
  • 時間が経つことで現れる本当の原因を見逃さないための、慎重な見守り

言葉の裏側にある「あなたを健やかに保ちたい」という医師の意図を知ることで、少しでも心の重荷が軽くなることを願っています。

これが、この連載で最も強くお伝えしたかったメッセージです。

たとえ痛みや熱がなくても、血液検査の数値が正常の範囲内であっても、あなたが「なんだか気になる」「納得できない」「怖い」と感じているのなら、それは十分すぎるほどの受診理由です。

医療機関は「病気」を治すだけの場所ではありません。

あなたの揺れ動く心を整え、「安心」を取り戻すための場所でもあるからです。

  • 心から納得するために、他の医師の意見(セカンドオピニオン)を聞く
  • 生活リズムや相性に合わせて、通う病院を選び直す。
  • 大切な家族に、心を込めて受診をお願いする。

これらはどれも、医師に対して失礼なことでも、間違ったことでもありません。

一番大切なのは、あなたやご家族が納得して、前向きに医療と向き合えているか。

ただそれだけなのです。

診察室で「こんなことで来てしまって、すみません」とおっしゃる方がいます。

でも、どうか謝らないでください。

病院は、動けなくなるまで我慢してから行く場所ではありません。

むしろ、「迷ったとき」こそが、あなたにとって最高の受診タイミングなのです。

この連載が、あなたが診察室のドアを少しでも軽く感じられるきっかけになったのなら、

これほど嬉しいことはありません。

全12回、最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

またいつでも、町でお待ちしています。

次回からは新シリーズとして「医療との上手な付き合い方」にいつて、より具体的に綴っていきたいと思います。

参考・引用元(内容の考え方の参考として)
※以下は本文を作成する際の医学的考え方の参考資料であり、本文はこれらをそのまま引用したものではありません。
・「上手な医療のかかり方:これからの医療との付き合い方」
 (厚生労働省 上手な医療のかかり方 公式HP)
・「患者さんの権利と責任:納得できる医療を受けるために」
 (日本医師会 医の倫理綱領・患者の権利)
・日本プライマリ・ケア連合学会「家庭医療・プライマリ・ケアとは」
・「shared decision making(共有意思決定)の基本概念」
 (日本意思決定支援ネットワーク)
ハーバード大学医学部出版局 (Harvard Health Publishing) 「医師との対話をスムーズにするためのガイド」を参考にしました。
www.health.harvard.edu
【重要】 医療上の責任について
本コラムは、医療に関する一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療方針を示すものではありません。症状や体調に不安がある場合は、自己判断せず、必ず医師または医療機関にご相談ください。
緊急性が高いと感じる場合は、迷わず救急車や、各自治体の救急電話相談(#7119(救急安心センター事業)など)を利用してください。「異常なし」と診断された後でも、症状が急変した場合や、耐えがたい痛み、意識の低下などがある場合、「いつもと明らかに違う」「様子がおかしい」と感じる場合は、速やかに医療機関に連絡するか、救急車(119番)を検討してください。
掲載内容は2026年3月現在の情報に基づいています。本記事の情報を利用した結果生じたいかなる損害についても、筆者および掲載媒体は一切の責任を負いかねます。

著者プロフィール
梶原 直央
当院管理医師 内科・外科医師
(元東京医科大学呼吸器外科教授)

日常診療では、病気そのものだけでなく、生活背景や不安も含めた相談を大切にしている。
本連載では、医療情報があふれる時代だからこそ、「何を基準に考えればいいのか」「どこまで心配しなくていいのか」を町のお医者さんの視点で伝えている。

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