• 2026年8月31日

<第2章>第12回  医師にうまく質問できないとき

~診察室で「うまく話せなかった」あなたへ~

こんにちは、町のお医者さんです。


診察室のドアを閉めた瞬間、「あ!あれを聞くのを忘れた……」と立ち止まってしまった経験はありませんか?

  • 「緊張してしまって、言いたいことの半分も言えなかった」
  • 「先生が忙しそうで、つい遠慮してしまった」
  • 「こんな些細な質問、失礼かな? と飲み込んでしまった」

実は、多くの方が同じような「もどかしさ」を抱えて診察室を後にされます。

今回は、町のお医者さんの立場から、質問がうまくできなかったときの「心の持ち方」と「対話のコツ」についてお話しします。

まずお伝えしたいのは、うまく話せなかった自分を責める必要はまったくないということです。

診察室という場所は、どうしても緊張しやすい条件が揃っています。

  • 限られた時間:次の患者さんが待っているかも……という無言のプレッシャー。
  • 慣れない言葉:専門用語が耳に入り、頭が追いつかなくなる。
  • 独特の空気感:白衣の医師を前にすると、どうしても構えてしまう。

こうした状況で言葉が詰まってしまうのは、ごく自然な反応です。私たちは、皆さんが緊張されていることを十分に理解した上で、そこに座っています。

「先生の時間を奪わないように、要領よく話さなきゃ」と、無理に内容をまとめようとする方がいらっしゃいます。

でも、町のお医者さんとしては、きれいに整えられた報告よりも、あなたの「生の感覚」を聞きたいと思っています。

  • 「なんだか、このあたりが落ち着かないんです」
  • 「うまく言えないけれど、以前と少し違う気がして……」
  • 「説明は聞いたけれど、実はまだピンときていなくて」

そんな、まとまらない言葉で十分です。その「モヤモヤ」の中にこそ、正しい診断や治療への大切なヒントが隠されています。私たちは、その欠片をあなたと一緒に拾い上げていくパートナーなのです。

質問は、その日のうちに100点満点で終わらせる必要はありません。医療は一度きりのイベントではなく、長く続いていく「対話」だからです。

もし「聞き忘れた!」と思ったら、こんな方法を試してみてください。

  1. 「質問メモ」を準備する
    次回の診察時に、メモをそのまま医師に渡してしまいましょう。これが一番確実で、実は医師にとっても「何が不安か」がすぐ分かり、非常に助かるのです。
  2. 薬剤師さんを頼る
    お薬に関することなら、薬局でゆっくり相談するのも名案です。薬剤師さんから医師へ、情報をフィードバックしてもらうこともできます。
  3. 「次回でいいや」と割り切る
    急ぎでなければ、次の診察の冒頭で「前回聞き忘れたのですが」と切り出せば大丈夫。医師は「よくぞ思い出してくれました」と歓迎します。

「質問をしたら、先生を困らせてしまうかも」
そんなふうに思う必要はありません。あなたが何に不安を感じているかを知ることは、私たちにとって、最高の「診療の助け」になります。

聞けなかったことは、次に持ち越しても大丈夫。焦らず、少しずつ、あなたと私たちの対話を深めていきましょう。その積み重ねこそが、あなたにとって最良の医療を作っていくのです。

参考・引用元(内容の考え方の参考として)
※以下は本文を作成する際の医学的考え方の参考資料であり、本文はこれらをそのまま引用したものではありません。
医師とのコミュニケーションのヒント
厚生労働省:上手な医療のかかり方(診察室での伝え方のポイント)
mhlw.go.jp
患者さんの「質問する権利」について

公益社団法人 日本医師会:インフォームド・コンセント(説明と同意)
med.or.jp
・薬局での相談・連携について

公益社団法人 日本薬剤師会:かかりつけ薬剤師・薬局
nichiyaku.or.jp

【重要】 医療上の責任について
本コラムは、医療に関する一般的な情報提供を目的としており、個別の薬の副作用判断や服薬指導、個別の診断や治療方針を示すものではありません。症状や体調に不安がある場合は、自己判断せず、必ず医師または医療機関にご相談ください。
緊急性の高い症状(激痛、強い呼吸困難、意識の低下など)がある場合は、質問をまとめる時間を待たず、直ちに医療機関へ連絡、または救急車(119番)を要請してください。
掲載内容は執筆時点での情報に基づいています。本記事の情報を利用した結果生じたいかなる損害についても、筆者および掲載媒体は一切の責任を負いかねます。

著者プロフィール
梶原 直央
当院管理医師 内科・外科医師
(元東京医科大学呼吸器外科教授)

日常診療では、病気そのものだけでなく、生活背景や不安も含めた相談を大切にしている。
本連載では、医療情報があふれる時代だからこそ、「何を基準に考えればいいのか」「どこまで心配しなくていいのか」を町のお医者さんの視点で伝えている。

芥川ウィメンズ&キッズクリニック 044-455-6388 ホームページ