• 2026年3月25日

第7回   「年のせい」と言われたときに考えてほしいこと

  • 「年のせい」と言われたとき、「諦めてください」という意味ではない理由
  • それは「諦め」の合図ではなく、新しい「付き合い方」の始まり

「まあ、お年の影響もありますね」

診察室でそう言われて、ガッカリした経験はありませんか?

「ああ、もう良くならないってことか……」

「年のせいにされて、まともに診てもらえていない気がする」

そう感じてしまうのは、とても自然なことです。

でも、私たち町のお医者さんが「年齢」という言葉を口にするとき、

そこには「諦めてください」という投げやりな気持ちではなく、

あなたを守るための「大切な視点」が込められています。 今回は、「年のせい」と言われたときの本当の意味についてお話しします。

医師が年齢に触れるとき、それは病気の原因を決めつけているのではなく、

「今のあなたの体の特徴を正しく知るためのヒント」としてお伝えしています。

  • 「回復のペース」が変わった 若い頃は一晩寝れば治った疲れも、今は少し時間がかかる。それは故障ではなく、体が「丁寧なメンテナンス」を求めているサインです。
  • 「症状の現れ方」が変わった 高齢になると、大きな病気でも熱が出にくかったり、逆にちょっとした変化が体に強く響いたりすることがあります。

「年齢」とは、今のあなたの体が持っている「クセ」のようなもの。

そのクセを知ることで、無理のない、あなたにぴったりの治療計画を立てることができるのです。

一方で、何でもかんでも年齢のせいにして片付けてはいけないケースもあります。

ここは私たち医師も、そして患者さん自身も、特に注意深く見守るべきポイントです。

  • 「急に」始まった変化 「数日で急に足腰が立たなくなった」「昨日から急に物忘れがひどい」といった急激な変化は、加齢ではなく、別の病気が隠れている可能性が高いです。
  • 「生活の楽しみ」が奪われている 「年だから歩くのが遅いのは仕方ない」と思っても、もし痛みのせいで買い物に行けないのなら、それは治療の対象です。
  • 「片側だけ」の違和感 左右どちらかだけが痛む、しびれる、といった左右差がある症状も、単なる加齢では説明がつかないことが多いです。

これらは、年齢という言葉の裏に隠れた「体からのSOS」かもしれません。

私たちが大切にしているのは、数字としての年齢ではなく、

「あなたらしい生活が送れているかどうか」です。

もし「年のせいですね」と言われてモヤモヤしたら、ぜひこう聞き返してみてください。

「年齢の影響があるのは分かりました。その上で、今の生活を少しでも楽にするために、何かできることはありますか?」

この質問は、決して失礼なことではありません。

今の体と仲良く、前向きに付き合っていくための、とても素晴らしい対話の第一歩です。

一緒に、今のあなたに最適な「過ごし方」を探していきましょう。

参考・引用元(内容の考え方の参考として)
※以下は本文を作成する際の医学的考え方の参考資料であり、本文はこれらをそのまま引用したものではありません。
□ 日本老年医学会:一般の皆様へ「老年医学とは」 (高齢者の体質や多病態への理解についての解説)
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/public/index.html
□ 厚生労働省:e-ヘルスネット「健康寿命と平均寿命」 (加齢と上手に付き合いながら自立した生活を送るための考え方)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heavy-metabolic/hy-01-001.html
□ MSDマニュアル家庭版:高齢者の病気の症状 (若年者と高齢者での症状の出方の違いについての医学的解説)
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/24-高齢者の健康の問題/高齢者における病気の現れ方/高齢者における病気の症状

【重要】 医療上の責任について
□ 本コラムは、医療に関する一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療方針を示すものではありません。症状や体調に不安がある場合は、自己判断せず、必ず医師または医療機関にご相談ください。
□「加齢によるもの」と診断された場合でも、その後、歩けなくなる、食事が摂れなくなる、急激な痛みが出るなどの変化があれば、速やかに医療機関を再受診してください。
□ 緊急性が高いと感じる場合は、迷わず救急車や、各自治体の救急電話相談(#7119(救急安心センター事業)など)を利用してください。「異常なし」と診断された後でも、症状が急変した場合や、耐えがたい痛み、意識の低下などがある場合、「いつもと明らかに違う」「様子がおかしい」と感じる場合は、速やかに医療機関に連絡するか、救急車(119番)を検討してください。
□ 掲載内容は2026年2月現在の情報に基づいています。本記事の情報を利用した結果生じたいかなる損害についても、筆者および掲載媒体は一切の責任を負いかねます。

著者プロフィール
梶原 直央
当院管理医師 内科・外科医師
(元東京医科大学呼吸器外科教授)

日常診療では、病気そのものだけでなく、生活背景や不安も含めた相談を大切にしている。
本連載では、医療情報があふれる時代だからこそ、「何を基準に考えればいいのか」「どこまで心配しなくていいのか」を町のお医者さんの視点で伝えている。

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