• 2026年5月16日
  • 2026年5月22日

<第2章>第1回 健康診断の結果、どう受け止めればいい?

~“異常あり”でも、慌てなくていい理由~

こんにちは。町のお医者さんです。

健康診断の結果が手元に届いて、封筒を開ける瞬間のあのドキドキ。
「要経過観察」「再検査」なんていう赤い文字が目に飛び込んでくると、「えっ、どこか悪いの?」「すぐ入院?」と不安に駆られてしまいますよね。

診察室では、健診結果を握りしめて、今にも泣きそうな顔で相談に来られる方をよくお見かけします。


今回は、健診結果という「数字の羅列」と、どう賢く付き合えばいいのか。その心構えについてお話しします。

まず、一番大切なことをお伝えします。


健康診断は、病名をつけるための「精密検査」ではありません。

健診の役割は、例えるなら「健康の交通整理」「ふるい分け」です。

  • 今すぐに対処すべき火種がないか?
  • 将来、大きな病気につながる「芽」が出ていないか?

これらを見つけるための、あくまで一次的なチェックです。


ですから、「異常あり」という判定は、「病気確定」ではなく、「もう少し詳しく見てみましょう」という単なるサインに過ぎません。

まずは深呼吸をして、落ち着いてください。

よく目にする「要経過観察」という言葉。
これは、「今すぐ治療は必要ないけれど、数値がどう動くか一緒に見守っていきましょう」という意味です。

診断というのは、実は数字だけで決まるものではありません。

  • 受診した日の体調(睡眠不足やストレス)
  • あなたの年齢や性別、これまでの持病
  • 普段の食事や運動の習慣

これらをパズルのように組み合わせて、初めて正しい判断ができます。

紙切れ一枚の数字だけで、自分の体のすべてを決めつける必要はまったくないのです。

健診の数値はとてもデリケート。前日の食事や、採血時のちょっとした緊張でも、数値はコロコロ変わります。一度だけ基準値を少し外れることは、実はよくあることなのです。

私たち医師が、単発の数値よりもずっと大切にしているもの。

それは「数年間の変化の傾向(トレンド)」です。


「去年より少し上がったかな?」「数年ずっとこの数値なら、これがこの人の個性かな?」と、

点ではなく線で見ることで、あなたの体の本当の姿が見えてきます。

「数字は少し高いけれど、自分はとっても元気です!」
これは、診察室でぜひ教えてほしい、とても重要な情報です。

もちろん、自覚症状がないまま進む病気もありますが、「本人の実感」と「検査の数字」をセットで考えることで、よりあなたに合ったアドバイスができます。


「数値が悪いから自分はダメだ」と思い込まず、今の自分の元気さにも自信を持ってください。

健診結果を見て、「書いてある意味が分からない」「放っておくのが怖い」と感じたら、それだけで相談に来る立派な理由になります。

「こんな些細なことで……」と遠慮する必要はありません。
結果を分かりやすく翻訳し、あなたの生活に合わせた「明日からの過ごし方」を提案すること。それも、私たち町のお医者さんの大切な仕事なのです。

健診結果の通知表は、あなたを脅かしたり、不安にさせたりするための紙ではありません。

そこには、これからのあなたの体をより健康に保つための、貴重な「ヒント」が書かれているだけです。

一人で結果を眺めて抱え込まず、分からないことはどうぞ気軽に相談してください。

医師と一緒に結果を読み解き、「じゃあ、明日からどうしようか」を一緒に考えること。

それが、健診結果を最も効果的に活用する、最高の方法だと私は思います。

  1. 健診は「ふるい分け」の場:            病気の確定ではなく、詳しく調べるためのサインです。
  2. 「流れ」を大切にする:     一度の数値に一喜一憂せず、数年間の変化を見守りましょう。
  3. 不安なときは「相談」を: 意味が分からない、怖いと感じたら、それだけで受診の理由になります。

健診結果は、「未来のあなたへの手紙」です。
どうか怖がらず、上手に活用して、あなたらしい健康管理に役立ててください。

参考・引用元(内容の考え方の参考として)
※以下は本文を作成する際の医学的考え方の参考資料であり、本文はこれらをそのまま引用したものではありません。
・「健康診断結果の見方」
 (一般社団法人 日本予防医学協会)
・「特定健診・特定保健指導について」
 (厚生労働省 公式HP)
・厚生労働省「e-ヘルスネット」(健康診断に関する一般的な解説など)
 www.e-healthnet.mhlw.go.jp
・日本医師会「健康診断を受けましょう」(健康診断の意義など)
 www.med.or.jp

【重要】 医療上の責任について
本コラムは、医療に関する一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療方針を示すものではありません。症状や体調に不安がある場合は、自己判断せず、必ず医師または医療機関にご相談ください。
健診結果に「要精密検査」「要治療」と記載がある場合や、自覚症状がある場合は、自己判断で放置せず、速やかに医療機関を受診してください。
掲載内容は執筆時点の情報に基づいています。本記事の情報を利用した結果生じたいかなる損害についても、筆者および掲載媒体は一切の責任を負いかねます。

著者プロフィール
梶原 直央
当院管理医師 内科・外科医師
(元東京医科大学呼吸器外科教授)

日常診療では、病気そのものだけでなく、生活背景や不安も含めた相談を大切にしている。
本連載では、医療情報があふれる時代だからこそ、「何を基準に考えればいいのか」「どこまで心配しなくていいのか」を町のお医者さんの視点で伝えている。

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